椎名林檎5年ぶりの全国ツアー「椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常」で泣き踊り笑顔と勇気をもらったOTK

椎名林檎5年ぶりの全国ツアー「椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常」で泣き踊り笑顔と勇気をもらったOTK

2023年5月21日

これはただの個人的なライブの感想なので、「中年が楽しかったんだな」と温かい目で見ていただけるとありがたいです。
ちなみにOTKとは、椎名林檎および東京事変ファンのこと。「オタク」のことです。愛好家とも言います。

あの時と同じ会場で。

私は2020年、閏年の2月29日、東京事変再結成ライブ「ニュースフラッシュ」の初日公演を見に行くことができた。そのツアーは、最初の2日間の東京公演だけ行い、後の公演は全て中止となった。新型コロナウイルス感染拡大のためだ。
初日のライブでは、厳重な感染対策が行われていた。だれ1人、声を出しているファンはいなかった。観客は全員マスクをしたまま、ライブMCもなくアンコールもなかった。終演後も、通常のライブなら、終演後に飲み屋などで感想を語り合うOTKたちも、静かにすみやかに会場をあとにした。その姿から、絶対に感染者を出すまい、というOTKたちの決意が感じられた。
それでも、ライブを開催したことは批判された。

そして2023年5月9日、あのときと同じ会場で、再び、林檎ちゃんの声を聞くことができた。
林檎ちゃんは何着目かの衣装替えでボクシンググローブをつけた右手を、天井へ向けて力強く突き上げた。
私には「みんなお待たせ」「帰ってきたよ」「やってやんぞ」といったメッセージに受け取れた。
この人がいるから、私は明日も頑張れる。涙が頬を伝い落ちた。
3年間、いろんなことがあったね。私たちがんばったよね。3年間、ずっと聞きたかった。待ってた。やっとこの日がきたんだ。

頭に巨大な熊手を乗せ微笑み歌う椎名林檎

林檎ちゃんのライブの衣装には毎回度肝を抜かれる。基本的にどんどん脱いでいく。最終形態はほぼ下着という衣装もザラ。OTKたちはいつも楽しみにして、脱ぐたびに「ヒョオーーー!!!」と歓喜する。
とくに2020年、閏年の2月29日、東京事変再結成ライブ「ニュースフラッシュ」のオープニングでメンバー全員が中世ヨーロッパ貴族みたいな巨大なつけ襟(エリザベスカラーというらしい)で登場していたのは忘れられない。林檎ファンを公言しているフワちゃんも、音楽番組であの襟に言及していた。「あんな演奏しにくそうな衣装、おじさんたち(東京事変のバンドメンバー)がおとなしく着てる」みたいな感じだった気がする。

で、今回もいろいろとすごかった。トップスは白いニットに、ボトムスは白いブルマにガーターベルトのようなものをつけニーハイソックスみたいのをはいてた。
何回目かの衣装替えで(後半だった)、全身白のワンピース?に、頭には酉の市の熊手のような赤い大きなめでたげなものが乗っていた。頭より大きなサイズの熊手。
頭に巨大な熊手を乗せながら、微笑み歌う椎名林檎の、なんとキュートなことか。
字面を見るとハテナ?だと思うけれど、まさにキュート。

アンコールでは、公然の秘密のMステ出演時と似た、タイトスカートだった。サイドがあみあみになったデザイン。パンツ履いてる?とドギマギしてしまう。「セクシー」の具現化である。

ファン歴25年のOTKである私。こんなに泣いたライブは初めて

もう数えてもわからないくらい、東京事変と林檎ちゃんのライブには足を運んでいて、私はいつも踊ったり暴れたりしても泣くことはほとんどなかった。楽しすぎるから。でも、今回は同行した14歳の娘にひかれるほど泣いた。

とくに、舞台『宝飾時計』で高畑充希ちゃんに提供した「青春の続き」が、もう、泣けて泣けて・・・。高畑充希ちゃんの少女っぽさがある声が本当にすばらしい楽曲なのだが、林檎ちゃんバージョンは大人の女性のイメージで、また違う物語のように聞こえた。ちょっとした抑揚の違いでここまで違う印象の曲になるのかという驚きもあった。

そして「TOKYO」。これもずっと生で聴きたかった。
ピアノ、ウッドベース、ドラムとヴォーカルの構成で、前奏は5/8拍子、メロディーが始まると6/8拍子のリズムに変わる。変拍子・転調が心地いい。ジャズな感じで進むのに、サビはバッチリ歌謡っぽい。

「同じ夜」。ファーストアルバム「無罪モラトリアム」の名曲は、林檎ちゃんによるピアノ弾き語り。ライブで林檎ちゃんがピアノを弾き語る演奏を初めて見た気がする。「無罪モラトリアム」は私の青春。何度繰り返し聞いたかわからない。「同じ夜」はエモい。「そんなん泣いてまうやろーー!」とまんまと泣いた。

アンコールの「ありあまる富」は大号泣。
椎名林檎さんの好きなところは何より誠実さである。音楽に対して、表現することに対して、生きることに対しての。
音楽の表現で、いつも私を励ましてくれるし、
「だまってらんねえな」ってことには、代わりに声をあげてくれるし、
つらいことには寄り添って許して抱きしめてくれる。
東京事変の「原罪と福音」もそうだけれど「ありあまる富」も、前を向いて歩き出す勇気になる曲だと思う。
アンコールのこの曲のはけ方が、他のライブでも見たことがある気がしたが…気のせいかな?最後にギターだけ鳴り残る、みたいな。

今ツアーのバンドは「MANGAPHONICS」てなってたかなあ??
もう全員優勝。
鳥越さんのベースはえぐかったなぁ。ウッドとエレキを持ち替え、もうなんか、自由自在なベースライン。そしてセクシーさもあって。鳥越さんの無限足上げダンス楽しかった。

中2のOTKの娘にも刺さる椎名林檎ちゃんの音楽

今回のライブで嬉しかったのは、娘と一緒に参戦できたこと。
娘には「生演奏」ライブのすばらしさを知ってほしかった。
娘は、何度もポロポロと涙をこぼしながら演奏を聴いていた。私の双眼鏡は娘に奪い取られた。
14歳のういういしい耳と心に、このすばらしい音楽がしみこんだらいい。

娘は「『公然の秘密』のベースが生で聞けた!」と喜んで、地元の駅から家までの帰り道、ベースのメロディだけを口ずさんでいた。変わった娘である。

椎名林檎は中年女性ではないのか?

不思議に思うことがある。林檎ちゃんは43歳の私の1個年上のはず。
今回のライブは2時間ほどあって、全25曲?ほどの難しい曲をあの声量で歌いあげるには、かなり鍛えている必要があると思う。

以前、ドリカムの中村さんの音楽番組「LIVEMONSTER(2014年11月)」では「生活は不摂生で美容と健康を保てていない」と話していた気がする。
でも2021年の東京事変のYouTubeでは、東京事変メンバーの伊澤一葉氏と一緒にトレーニングをしている姿も映されていた。
やはりあのようなステージをこなすにはアスリートのような体力づくりが必要なのだろう。

しかも、彼女の下の2人のお子さんは確かまだ小学生くらい。
ライブの開催日は平日。学校もあるはず。
ということは、ライブの翌朝7時には起きないといけないではないか。
夢のようなライブをしても、母としての生活もきっとある。

いくら鍛えているとしても、全国ツアーであのような舞台を何度も開催し、へっとへとになったりしないんだろうか。
「お母さん起きれないから、今日は学校お休みね」とかであってほしい。

以前、俳優の吉田羊さん(彼女もかなりの愛好家)との対談で、羊さんに「アンコールの最後の曲のあたり、『もう帰れる』と思ってません?」と聞かれ、林檎ちゃんはニヤリとしていた。気がする。
働く母としての一面がファンクラブ限定のつぶやきで見られるのも、母OTKとしては共感・親近感がわいて、たまらない。ただどうしても彼女が中年女性とは思えない。

椎名林檎のライブはダンサーも映像もかっこよすぎ

東京事変のアルバム「音楽」のティザー映像に出演していた姉妹ダンサーのSISが出ていたこと。
新曲「私は猫の目」の映像にダンサーBambiちゃん(仲万美さん)が出ていたこと。
どちらもアツい。
Bambiちゃん、悶絶するほどかわいかった。美しいおしりに釘づけであった。
児玉裕一氏が手がける映像もめちゃくちゃかっこよかった。

聞いても見てもかっこよすぎるのが椎名林檎ちゃんのライブである。

最後に

自分の心のうちを初めてこんなふうに書いてみた。
私のリアルな友だちは、私がずっと椎名林檎ファンだということはみんな知っているが、
どんなところが好きか、素晴らしいと思うかを、言葉にしたことはあまりなかった。
(え?してた?)
言葉があふれてまとまりきらないから。でもここらで一旦、表出してみました。
「推しを推す」文化が大衆化してきたからというのもあるかもしれない。
言葉にしてみることで、あのライブの感動が、さらに心に刻まれた気がする。

ライブの最後に林檎ちゃんは「きっとまたすぐにお会いしましょう」と言っていた。その言葉を信じて、またすぐ会える日を楽しみに、今日も大切に生きようと思う。