風芽美空 著『7年間の不登校から15歳で飛び込んだ社会は、思っていたよりあたたかかった』

風芽美空 著『7年間の不登校から15歳で飛び込んだ社会は、思っていたよりあたたかかった』

2023年6月23日

今は会社員として働きながら不登校支援などの活動をしている風芽美空さんが、自身の不登校経験についてラジオアプリで語った内容をまとめた本『7年間の不登校から15歳で飛び込んだ社会は、思っていたよりあたたかかった』(発行:びーんずネット)を読んだ。

私が美空さんのお話をはじめて聞いたのは、3〜4年前。今回の本の発行元であるびーんずネット(川崎市の不登校支援者)のイベントだったと思う。
やわらかな雰囲気のかわいらしい女性が話す不登校の経験は、けっこうハードめだった。
小学校3年生で担任から体罰を受け学校が怖くなったこと、押入れで暮らしていたこと、おふろにも入らなかったこと、中3までの7年間不登校だったこと、・・・当時の私にとっては衝撃的な内容だった。

その日のイベントでは、彼女が大好きなアクションゲームをプレイする企画もあって、参加者にやり方を教えながら、対戦していた気がする。
不登校児は家でゲームをすることが多いので、ゲームのやりすぎを心配する親は少なくないんだけど、美空さんは「私はゲームがあったから生きてこれた」と言っていた。「子どもの好きなゲームを一緒にプレイすると子どもはうれしいと思う」「ゲームから学べることもたくさんある」などと話してくれて、たしかにそうだと納得したのを覚えている。

美空さんの話を聞いたから、私は自分の子どもが学校へ行かないことへの心配がかなり薄らいだと思う。彼女はふんわりした声で「学校へ行かなかったけど、私は今社会で働いています。だから大丈夫」と語ってくれた。

今作では、美空さんの不登校の経験をふくめ、彼女がこれまでどんなふうに生きてきたかがつづられている。
学校に行かない子の親は、きっと子どもの将来がいちばん心配だと思う。
不登校の子どもや家庭の状況はそれぞれ違うけれど、この本には、その将来のひとつの例が書かれている。
ハードな内容もあるけれど、あんまり悲観的じゃなくて、客観的で前向きで読みやすい。
おそらく当時はとってもつらかったと思うけれど、そこはさらりと書かれている。
そんなところから、美空さんは、不登校だった時期も含めて今を生きているんだなと感じた。
だからこそ、不登校で悩んだり苦しんでいる人にとっては、一筋の光のように感じるのではないかな。

私がとくに好きなのは、小学生だった美空さんと、今の美空さんの手紙のやりとりだ。
幼かった美空さんが、大人になった美空さんから、困っていたそのときにこの手紙の返事をもらっていたら、少しは心が楽だったかもしれないなあ、と思う。

もし、いま子どもが学校に行かないことで悩んでいる方がいたら、不登校解決の本や育児書よりも、この本を読むことをおすすめしたい。
親が知りたい子どもの気持ちが、きっとここにある。