私の実家は祖父母の住む家と同じ敷地内にあった。
子どもを産んで実家の隣に住んでいた私は、祖父母に子どもと遊んでもらうことがあった。
祖父母が亡くなる少し前には、2人とも自宅介護が必要な状態となった。
祖母の介護は祖父がやってくれた。
祖母が他界したのちは、祖父の介護は父がほとんどやってくれた。
私は食事を作ること以外は、ほとんど2人の介護にかかわらなかった。
介護をしたら、それまで私が知っていた祖父母とは違う人になってしまうと思った。
こわかった。
それに大人の汚物に触れたくないし、私にはおむつ替えもできないと思っていた。
でも、私は知らなかっただけだったんだ。
と、この本を読んでわかった。
どんな人にも人間らしく生きる権利がある。
命の尊厳のようなものが、この物語の根底に流れていると感じた。
病気になっても、自分らしく命を続けることの尊さも描かれていた。
読み終えて、心がじんわりあたたかくなった。
1人の医師が、悩みながら日々の診察や治療にあたる姿から、
介護は、お世話をしてあげることではなくて、家族として一緒に生きることなのではないかと考えた。
「お世話をしてあげる」と思っていた自分の傲慢さを恥じた。
祖父母の介護すら手出しできなかった私は、親の介護もまだ先のことと思っていたかった。
きっと、こわいから、見たくないものがたくさんあるんだろう。
この物語を読んで、少しだけ、父の人生の終わりのほうの時期を一緒に迎える覚悟ができた気がした。
とかいって終戦の年生まれの父はまだ元気ですけど。
先日も、父は私の息子(16)に「ディスコードでサーバを立てる方法を知ってたら教えてほしい」と聞いていた。
コンピュータおじいちゃんです。
『ブラックウェルに憧れて』
ちなみに、南杏子さんの『ブラックウェルに憧れて』(光文社文庫)も読んだ。
これはもう感動して感動して。まさかこんなに泣く?!というくらい涙が出た。
医師たちの世界って、本当にこうなの?!と驚いた。
医師である南さんだからこそ書ける世界なんだろう。
健診で内科を診てくれる先生と、大学病院の先生と、同じようなことを相談しても答えが違うのはなぜだろうと思っていたことが明らかにもなった。
お医者さんも人間なんだなぁ。とも思った。
くだらない派閥とか出世とか肩書とか、噂話とか嫌がらせとか
そういうのってどこの世界でもあるんだなぁ。
衝撃的だった。
そして、そんな医療界で働く4人の女性医師たちの、学びや仕事への姿勢にも胸を打たれた。